2025/05/24 14:53
フェンスの向こうに広がる、リードのない自由な世界。
その扉を開けたとき、犬の身体が軽くなり、目が輝き呼吸が深くなる。人の歩調に合わせていた散歩では決して味わえない、自分の意思で走り、止まり、においを辿る本来の身体感覚がそこにある。犬も飼い主も含めエネルギーバランスのとれた穏やかなドッグランはとても素晴らしく新しい関係のかたちを模索するきっかけとなる場所となる。
しかし同時に、そこには見逃してはならないリスクがある。よく「コントロールができなくなる」ことが不安視されるが、実際に多くのトラブルの引き金となるのは「犬の興奮」なのです。広い空間、初対面の犬、走る音、におい、刺激が重なり、犬のテンションは一気に高まりやすい。さらにその興奮は周囲の犬たちに連鎖し、些細なじゃれ合いが一瞬で衝突に変わることもある。一見分かりずらい静かな興奮もあることを知っておくべきこと。そう、トラブルは突然に起こるのではない。それは、興奮が未消化のまま加速した予測可能な事故なのだ。つまり、ドッグランの鍵は「自由」よりも「興奮のコントロール」にある。犬の表情や動きから小さな変化を察知し、適切にクールダウンさせる。状況によっては入らない。退場する。その観察力と判断力こそが飼い主に求められるスキルなのです。
ドッグランとは、犬と人の関係性が試される場所だと思う。犬に自由を与える覚悟と同時に、興奮を落ち着かせる知識と観察力をもつこと。それはただ「遊ばせる」ための施設ではなく、犬と人、互いの成熟を問う鏡のような空間なのかもしれない。
