2025/08/25 13:43
犬の歴史を紐解くと「純血種」という概念自体が人の営みと深く結びついていることに気づく。ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーといった犬種も、もともとは特定の作業や役割のためにいくつかの犬種が選抜され、固定化されることで「犬種」として確立してきた。つまり純血種とは長い年月の中で目的を持って計画的に作られ、守られてきた文化遺産のような存在でもある。
犬種は偶然の産物ではなく、歴史の中で犬種が増えてきた背景には、狩猟、牧畜、番犬、伴侶といった「人間社会のニーズ」がありました。そこには人間の実利と愛情そして文化的な価値観が重なり合っている。
現代に目を向けると、動物福祉や愛護の観点からの変化も見逃せない。かつて当たり前とされていた断尾や断耳は多くの国で禁止され、犬種標準そのものも見直されつつある。ショーの世界においても「美しさ」一辺倒ではなく、犬の健康や生活の質が重視されるようになっている。時代の価値観とともに変化している。
その一方で、日本国内における人気犬種ランキングで「ミックス犬」が一位を占めているのが現状。ミックス犬は多様で愛らしい存在だが、その背景には注意すべき点も少なくない。純血種同士の交配(F1)であっても、遺伝病や体格差によるリスクは常に存在する。ましてや、ダブルコートとシングルコートのミスマッチによる伸び続けるダブルコートの被毛問題や関節・心臓への負担といった問題を引き起こしている犬が少なく無い。
ここで問いたいのは、「是か非か」という単純な二元論ではない。問題は、利益優先のペットマーケット。無知による選択。希少性や見た目の珍しさだけを求めた先に何が残るのかということ。純血種もミックス犬もそこに命があり関わる人の責任がある。犬種を文化として守ることと、個体の健康や幸せを大切にすることは決して対立するものではなく本来は同じ地平にあるはずでは無いでしょか。
過去、犬は人の生活を支える存在として目的を持って作られてきた。現在、犬は伴侶として私たちの暮らしの中にいる。そして未来に向けて私たちは「犬をどう作るか」ではなく「犬とどう生きるか」を問われているのではないだろうか。
