2025/12/07 18:50

ウォーキングトレーニングや躾をしていると、私たちはつい犬が「理解しているか」「指示を聞けているか」を基準に見てしまいがちです。でも、人にも犬にも心には二つの層があります。顕在意識と潜在意識です。

顕在意識とは、言葉で説明できる領域のこと。「座れ」「ツケ」「待て」と声をかければ、その意味を理解できている状態。一方で潜在意識は無意識の層。経験や感情、記憶、成功体験、身体感覚、習慣…そうしたものが蓄積され、思考より先に反応として現れます。

散歩中に急に興奮したり、引っ張ったり、吠えたり、周りに気を取られたりする。あれは指示が分かっていないわけではなく、潜在意識側の衝動が健在意識の理解を追い越してしまっているのです。

これは人間でも同じです。例えば、夜食を控えたいのに食べてしまう。挑戦したいのに、人の目が気になって動けない。頭で理解していても、感情や無意識のほうが行動に強く作用します。

心を庭に例えるなら、健在意識は花を植えたり剪定するガーデニングで、潜在意識はその土壌。どんな花(行動)を植えるかよりも、どんな土(経験や感情)が育っているかのほうが結果を左右します。土が変われば、花の育ち方も自然と変わるように。

だから散歩やしつけは行動を直すための時間というより、潜在意識という土壌を育てる時間だと考えてみてください。興奮ではなく、安心や成功体験、落ち着くリズムが積み重なっていくと犬は無意識のレベルでより良い反応を選べるようになります。

スリップリーシュで歩くことは、犬と人の心の土を整えていくプロセスそのもの。理解させるだけでは届かないところにアプローチすることで、散歩もコミュニケーションも、驚くほど穏やかでスムーズになっていくと思います。