2026/08/21 09:48
「川は怖い」頭では分かっているつもりでした。これまで何度も犬と川で遊んできたし、川選びにもそれなりに気をつけてきた。
だから今回も、事前に下見をして、人が居なくて犬たちがゆっくり遊べそうな場所を選びました。
まさか、自分の犬が流されるという経験をするとは思っていませんでした。
その日はお盆明けの15時を過ぎていました。
車から水辺へ向かうと、まだ岩場には昼間の熱が残っている。
まずは犬たちを浅瀬に入れて、ライフジャケットとロングリードを準備しようとしていました。
グリズがいたのは、川の淵。
水が淀んでいて、ほとんど流れを感じない場所でした。
川幅も広い。水面も穏やか。
見た目には、危険を感じるような場所ではありませんでした。
でも、その先には早瀬から深い平瀬へとつながる流れがありました。
そのことを、この時の私は十分に把握できていませんでした。
そして、ほんの一瞬。
グリズが水の中を2mほど泳いだ、その瞬間でした。
突然、身体が横へ持っていかれた。
「え?」
そう思った次の瞬間には、グリズの姿が流れの中に入っていました。
「グリズが流された!」
その声を聞いて振り向いた瞬間、血の気が引きました。
グリズは泳いでいるのではありませんでした。
犬かきをして、自分の意思で進んでいるような動きではない。
身体を流れに持っていかれ、必死にもがいている。
そのまま瀬に飲み込まれそうになっていました。
頭の中で何かを考える余裕なんてありません。
持っていた荷物をその場に放り投げ、そのまま川へ飛び込みました。
グリズが流されていく。
その先へ回り込まなければいけない。
必死で追いかけ、なんとか身体をつかみました。
首元をつかんで、まず呼吸を確保する。
でも、そこで終わりではありませんでした。
陸へ上がれない。
岩場には苔がついていて、足が滑る。
力を入れても身体がずるっと落ちる。
グリズを抱えながら、何度も足を取られました。
それでも、なんとかグリズを先に岸へ上げて「待て!」の指示。
少し場所をずらし、僕もようやく川から戻りました。
グリズ連れてもポーラーの待つ場所へ戻り始めました、その場所からポーラーの悲痛な声。が、その声が聞こえなくなりました。
一瞬、嫌な予感がしました。
そして次の瞬間。
「ポーラーも流された!」
一人残されたポーラーは、私たちを追って川に入ってしまったのです。
怖がりで自らは入らないと思っていました。。。
一瞬で、また状況が変わりました。
今度はグリズを置いて、ポーラーを追わなければならない。
とっさにグリズのリーシュを岩の間に挟み込み、「待て!」と叫びました。
そして、ポーラーが流されていく川へ再び飛び込みました。
ポーラーの姿を追い、なんとか身体をつかみました。
引き寄せた瞬間、頭の中に一つのことが浮かびました。
もしグリズとポーラーが同時に流されていたら。
もし二頭が別々の方向へ流されていたら。
もし、どちらかを追っている間に、もう一頭がさらに流されていたら。
そう考えた瞬間、身体が震えました。
本当に危なかった。
今回の事故は、川が荒れていたわけでもありません。
台風の日でも、大雨の後でもありませんでした。
一見すると、穏やかな川でした。
だからこそ怖い。
僕が油断したのは、まさにそこでした。
流れの強さを確認していなかった。
川底の状態を確認していなかった。
どこから水深が変わるのか確認していなかった。
そして何より、その確認をする前にリーシュを手から離してしまった。
ライフジャケットも、ロングリーシュも、まだ装着していませんでした。
「浅いから大丈夫」 「ここは流れがないから大丈夫」
その「大丈夫」が、一瞬で崩れました。
川は、水面だけを見ていても分からない。
数メートル先で流れが変わることもある。
浅く見えても、川底の形状によって突然身体を持っていかれることもある。
そして犬は、人間のように「危ないから戻ろう」と判断できるとは限りません。
今回、グリズが流されたのはほんの数秒の出来事でした。
でも、その数秒がとても長く感じました。
そして、ポーラーが流された瞬間。
「またか」という恐怖より先に、「二頭同時に流されたら、どうする?」という現実的な恐怖が襲ってきました。
川遊びは楽しい。
犬たちが水の中で楽しそうに走り、泳ぎ、こちらを振り返る姿を見るのは本当に楽しい。
だからこそ、怖さを知っておかなければいけないと思います。
事故は、特別な場所で、特別な人に起こるものではありません。
「今日は大丈夫だろう」 「ここなら大丈夫だろう」
そんな、ほんの一瞬の油断から起こる。
今回、グリズとポーラーが無事だったことは、本当に幸運だったと思います。
川に入る前に、まず川を見る。
流れを見る。
川底を見る。
水深の変化を見る。
普段ドッグランに入るときはそうしてるのに。。。
そして、安全装備は「必要になったら」ではなく、「水に入る前」に装着する。
当たり前のことですが、その当たり前を絶対に省かない。
今回の事故で、身をもって思い知らされました。
楽しい川遊びを、楽しいまま終えるために。
